八重山毎日新聞社コラム
「己の世界」から脱出するのは難しい。一般的にはこれを「殻を破る」とも言う。
【掲載:2025/05/10(木曜日)】
やいま千思万想(第284回)
「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一
今ほど「世界観」を変える必要に迫られている時はない
「世界」を感じることから始めないと、人間の問題は先へと進めることはできない。
「世界」を考えるに最も近いイメージは「宇宙」でしょうか。
現在も人類は地球外へと向かっている、その計画は今も続いている。
人間の好奇心は地球外へと向かっているのだ。それは地球という惑星を外から客観的に見つめるということ。
地球が青い星で月の地平線から上ってくる感動的なシーンを私たちは観ることができたのだ。
学者たちの、そして関わった人々の夢が、希望が叶えられたのだ。月から眺めた地球をネットを通じていつでも観ることができる。
これは人類にとってとんでもない大事件だったのだ。
それは我々に何をもたらしたのか?私たちの生きる、住む世界には『まだまだ多く「他の世界」が有る、
想像を超えた「他の世界」もあるのだ』、ということなのだ。
現在地球に住む我々人類は、その事を忘れて地球以外の視点で物事を見るのを怠っている。
多くの人たちの視点が内向きの狭い範囲でしかない。またその視点が狭く、小さく細分化されたミクロの世界でしかない。
ミクロの世界は、それを含むより大きな世界を観ることによってしか比べることができない。
そのことに私はとても危惧する。
ミクロの私たちの世界はどれもリアルで、それ自体が正義で、自信に溢れている。
しかし、「他の世界」から眺めればとても矮小で拙い想像の世界でしかないのかもしれないのだ。
現代を牽引するクリエーターたちとは、その視線は「己の世界」を見つめながら、外の世界からの視線も必要とする。
そうでなければ新しい発見と未来への夢が立ち現れないことを知っている人々なのだ。だからクリエーターと成り得る。
私たち一人一人もクリエーターに成ってこそ、「世界」とは興味の尽きないものであることに気付く。
今、この地球上ではとんでもない事が至るところで起こっている。その源がアメリカ。
アメリカの動きに世界各国が疑心暗鬼、それで激震が走っている。世界が混乱している。恐怖を感じている人も少なくない。
我が国も同じで、国内の事件と世界的な事件が併走し、混乱している状態だ。
アメリカに追従する事と、異議を申し立てて我が国の誇りを守る事とが各論の中で混迷している。
この時こそ「己の世界」から「他の世界」へと脱出し、視点を変えるチャンスになるかもしれないのに。
事の「反対」「賛成」が対立している。一方的すぎる意見がそれぞれに向かい合っている。
当事者から見れば真剣でも、少し視点を変えれば滑稽に見えてしまうかもしれない。
人間というのはそれほどに不確かで、未成熟な動物だと、私は思う。
我が国が全ての分野において劣勢であると言われているが、今こそ「己の世界」からの脱出が必要だと思う!
「己の世界」からの脱出で得るものは「偏りに陥らないバランス」。
未来への指針とその希望なのだ。
・・・・・それが本当の「知恵」を得る、と言うことなのだと私は思うのです。