八重山毎日新聞社コラム
私が観るテレビはほとんどがドラマです。テレビのドラマが今、実に面白い。
【掲載:2025/06/19(木曜日)】
やいま千思万想(第287回)
「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一
少しずつではあるけれど「真」を受け入れる雰囲気が拡がってきているように思います
特に最近は「こんな筋書きはこれまでに無かった」というもので「現代世相」を大胆に取り入れての内容。
それは現代を反映する鋭さも持っている、ですから現実感としてこれまでのものとは迫力が桁違い。
「台詞」が辛辣。脚本家とドラマ制作スタッフの本気度が伝わってきます。
カメラの撮り方や、時代考証、CG(コンピュータグラフィックス)を駆使した映像がそれを後押し、如実に物語る。
テレビのドラマ界だけが「自由度の高い言葉の扱い」。
ワイドショーなどは「楽しさだけ」を追究しているとしか思えないものばかり。
中にはトークさえ笑えない「トーク番組」もある。
人間にとって「笑う」ことの大切さは日に日に増して証明されてきているのですが、できれば質の良い?
腹から笑えるものに出会いたいです。
言葉の深さや面白さに接する機会は大切で、それはコミュニケーションに依って培われます。
しかしテレビの笑いやドラマの言葉を味わうことでも、対面しての会話を補うことができるそうです。
脳が働き、行動を伴う身体の動きとなれば健康にも繋がるということです。
私は朝観るドラマはBSのNHK朝ドラです。今放送中の「あんぱん」は驚きの脚本、そうとう練った台詞が連発です。
先週から今週にかけては主人公の軍隊体験に入っています。
軍人になった弟との会話や、軍隊での出会い、その時の台詞が当時の雰囲気を良く表していると感じます。
出演者への演出(直立不動の姿勢、敬礼など)が徹底されています。
この番組を観た後(観ながら)、朝食を摂り、仕事をするために自室に入るまで「羽鳥慎一ワイドショー」です。
この番組、以前にSNSを賑わせたことでよく知られています。
出演者であるコメンテーターの言葉が炎上したのです。
それが今ではこの時間帯で最高視聴率を誇っています(同時間帯のNHK「あさイチ」と双璧を成しているようです)。
炎上のコメンテーターの意見も以前よりも洗練され、チクリと刺す発言は今も衰えていません。
視聴率の高さはこの人物に依るところ大と私は思っているのですが。
もう一つ、私が観る番組に日曜日の報道番組「サンデーモーニング」があります。
この番組でもコメンテーターの交代劇がありました。
他の番組での発言だったのですがその責任を取らされた形で降板しています。
その人物が自省し、辞退したと思われるのですが、「番組を降りる(降ろされる)」ことは報道規制が強く行われた頃と時が同じ。
不適切な言葉として自省した結果だとはいえ何かしら息苦しさを感じます。
そういった経緯を経て受け手が言葉の意味に幅を持たせ文脈で判断する。
そうした判断や自由な素地が少しずつ表れて来ている、これは率直な思いです。
今日でもSNS上の一部では悪質な誹謗中傷は未だ無くならないで続けられています。
メディアで最も自己規制が強いのはテレビだとする出演者の意見を聴きました。
対するラジオや出版業界では「真」を受け入れる「賢い国民」が増えつつあると見ます。