八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.37


【掲載:2014/08/17】

音楽旅歩き 第37回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[人類の歴史は短い!命が紡ぐ音進化はどうなる?]

 「木を見て森を見ず」ということわざがあります。
物事の一部分や細部に気を取られて、全体を見失うことの意味ですね。類義のことわざとして「鹿を追うものは山を見ず」とか「獣を追う者は目に太山を見ず」もあります。
 私の性格でしょうか、足許ばかり見て、前方遠くを見ていないことによく気づきます。
細かいところが気になってしかたないのですね。
それがどんどん深みにはまってしまい、抜け出せなくなってしまいます。
その時、ハッと我に返って、「木を見て森を見ず」だ!と引き戻すわけです。
 前を見据えたいと思います。見据えて進みたいと思っています。
しかし、沢山の不安や悩み事が現れて気になってしかたありません。
人生や仕事も一緒だと思うのですが(音楽もその中に入ります)、そのことで滞った折り、どこかで見た一本の縦軸年表を思い浮かべることにしています。

 地球が誕生した46億年前を1月1日とし、現在を12月31日とする一年を縦軸で表した年表で、一目で地球と人類誕生の経緯が計れるのですが、それによると何と、人類誕生は1年目を目前とする6分ほど前という驚愕の時間となるらしいのです。
つまり地球の歴史に比べれば人類の歴史など、全くの、本当に全くの短さなんですね。
とにかくこの地球上での生命の営みはまだまだ、一瞬の出来事に過ぎないというわけです。

 音楽を生み出す「音」はただの「空気の振動」だと前回書きました。
その空気の振動の波が状況によって伝わり方が変化し、情報処理場の脳もまだまだその原始的な性格を維持しながらの進化を辿っているはずです。
その変化の行程の複雑さを思えば、この先、上記の地球の歴史を考えれば気の遠くなるような時間を待たなければならないことになります。

 先日、厚生労働省の発表で、平均寿命が男性が80.21歳。女性は86.61歳になり人生80年時代に入ったとの発表がありました。
女性は何と世界一。
男性は世界の4位。
これは驚嘆すべき数字と思ってしまいがちですが、地質学的に見ればこの数字もまた一瞬の時間です。

 人類の進化は始まったばかり。これから加速度を増すのか、それとも止まってしまうのか。
まだ誰にも予想がつきません。
全ては地球の環境の問題と関連します。

 音楽に話をもう一度戻しますが、耳と脳の働きである人類の聴覚、つまり音楽としての享受は五音の音階(ペンタトニック・スケール)からですし、ハーモニーも五度の響きを長く楽しむことから始まっています。
実にシンプルです。
西洋がその後二つの半音を加えて7音とするのも、脳が記憶できる数の限界とも一致(人間の短期記憶の限界はおよそ七つのようで、音楽家が同時に七個以上の音を使うことはめったにありません)、人類の進化はまだ始まったばかり、これからどう進化していくかは予測ができないということなのですね。
地球の歴史を思えば気の遠くなるような時間をやはり待たなくてならないようです。
(この項終わります)





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ