八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.38


【掲載:2014/08/31】

音楽旅歩き 第38回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[長距離移動の醍醐味、それは新たな出会い]

 8月、それは私にとって一年を通して移動距離が一番長い季節。まさに「音楽旅歩き」です。
行く先々で新しい出会い、また珍しい風景や物産、そしてその土地ならではの習慣や建物、そして人々の暮らし。
仕事としての旅行ではありますが、出来る限り滞在して観光も兼ねようとしますからその移動は現地までの距離以上に延びることがほとんどです。

 今年は先ず東京から始まりました。8月1日〜3日は「合唱講座in東京」。
移動は速くて楽なのは空路なのですが、どうも私は飛行機が苦手です。
あの窮屈さとジェットエンジンの噪音の中、閉所的空間が私を緊張させます。
 ですから移動は新幹線です。
電車は少し時間はかかりますが(移動距離は約500km)、車中の読書や楽譜読み、そしてインターネットも使えて私にはその移動も実益を伴います。
講座の三日間は多くの出会いと実践で緊張感ある場となり、音楽を通して人の交流が熱を帯びる活き活きとした空間でした。
声が持つ不思議とその魅力を伝えられた瞬間の受講生の笑顔が忘れられません。

 その後東京から一旦大阪に戻り、女声合唱団を含む4団体の合唱練習。
そして4日後には台風11号から逃げるように、苦手な飛行機で北海道の函館に飛びます。
大阪―函館間約900kmの旅です(大阪から石垣までの距離が約1600kmですから短いといえば短いのですが)。
ある声楽アンサンブルの招聘に応じての長距離移動で、二日間に及ぶ素敵な出会いと感動的な練習。
そして函館の美味の食事(イカなど魚料理)と美しい風景(異国的な建造物)で移動の疲れも感じることなく次の目的地、東京に飛びます。

 東京で一日休み、12日〜16日まで行われる夏合宿(私が指揮する5つの合唱団が集結)会場である伊豆湯ヶ島温泉へと電車移動です。
秋以降に予定されている演奏会のための練習を一堂に会して行う夏合宿。
一日24時間、自由に練習ができる機会はそうあるものではありません。
集うメンバーの真剣で笑顔の絶えない表情が何と輝いて見えたことか。
あっと言う間の五日間を終え、数名と共に恒例の西伊豆へと車を飛ばします。

 二日間のしばしの休み。泊まるペンションのオーナーは彫刻家兼陶芸家。
酒を酌み交わしての芸術談義は楽しく、富士山が見える駿河湾を望んで夜が更けるまで続きます。

 大阪に戻って今度は奈良県吉野での大阪薬科大学の夏合宿へ。
ここのお宿で頂くお茶菓子の「葛まんじゅう」が美味しい。
そしてその日は一度自宅に戻り、22日〜24日名古屋で開講される「合唱講座」へ。
名古屋も東京と同じように熱く盛況のうちに終えたのですが、噂の名古屋文化?に一撃を受けます。
疲れた頭と体で入った名古屋の喫茶店。
その騒々しさに仰天!泣きじゃくる子供を叱らない若いお母さんたちの大声のお喋りは痛々しい。
その喧騒の中で疲れて眠りこけている私ではありましたが、まだまだ続く長距離移動の終盤を迎えるには少し悲しい様ではありました。





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