八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.72


【掲載:2016/03/18(金)】

音楽旅歩き 第72回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【人の暮らしは響きの歴史(その16)】

 寒かったですね。空港に降り立った時、これは大阪とあまり変わらないではないかと思いました。
先月、2月25日の新石垣空港でした。大阪は寒くまだ冬の一桁台の気温。南の島に行くのだからとコートは脱ぎ、少し厚手の服で来島したのですが、体感温度は大阪とそう変わらず、丁度良い防寒の服装でした。
その後も島は曇り空が多く、肌寒い日々。暖かくなったのは数日後、3月に入ろうとする頃でした。
一旦日が照ればやはり陽射しがきつくなってさすがの石垣島ですね。

 2月28日の日曜日、黒島の牛まつりに出かけて自転車で島巡りをして来ました。
油断して日焼け止めを塗らずに走ってしまったものですからもう赤くなるほどに焼けてしまいました。黒島は日陰になるところがほとんどないのですから、無謀でしたね。
 3月5日には初めて小浜島に渡りました。
その日は天気の良さもあって展望台からの眺望と陽射しの強さが印象的な訪れとなりました。
島はアップダウンの大きい道ですから自転車は諦め、レンタカーを借りての島巡りとなったのですが、それはそれで短時間に島巡りができて良かったかもしれません。
しかし、離島へと渡った時にはその島に一泊でもよいから泊まるべきだと後で思いましたね。
数時間で折り返す、また石垣島に戻ってくるのでは離島の良さを充分には味わえないのではないかと思います。
島民の方との語らい、そして夜の風景を見なければ島に行ったことにはならないのではないかとの思いで、後悔です。

 両島の音環境は静かでした。黒島のまつりでは島全体に響き渡るようにメイン会場での催し物で賑わっていましたが、島が平たいせいか反射音もなく、少し離れれば静かな風景が広がります。黒島といい、小浜島といい、その静かな佇(たたず)まいは私にとって保養のひと時となりました。日差しはきつかったですが。
 今回の訪れで感じることは石垣島の様変わりの速さと会話の声の大きさでしょうか。
前回訪れた折にも町の風景の様変わりを感じたのですが、今回も道路、建物、店の移転や新開店が矢継ぎ早に行なわれているようで、その速さに逞(たくま)しさと同時に少しばかりの不安を覚えます。
まぁそれはそれとして後にも考えてみたいのですが、先にも書きました至る所で出会った〈声の大きさ〉はちょっと閉口ものです。
隣にいる私たちの会話が聞こえなくなるような大きな声でお互い近距離で会話を交わす。
パリッとした発声の歯切れよさもあって一層響き渡っています。
笑い声に至ってはもういけません。静けさの中、空気を引き裂くような響きが湧き起こります。
女声が多いのですが、たまに男声の声も上がりますから堪(たま)ったものではありません。
言ってみれば、周りに対する配慮が足りないのですね。
自分たちの世界だけで、他の世界もあるとは感じられていないのではないかと思われます。
「響きの文化」が変化して来ているのでしょうか。
互いの距離感を測って声を聴きあう。これ、とても大事ですよね。
(この項続きます)





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