八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.126


【掲載:2018/10/14(日)】

音楽旅歩き 第126回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

延期となった画期的なオペラ(「歌芝居」)

 我が団(大阪コレギウム・ムジクム)史における画期的な演目となる筈であったオペラを9月30日に演奏する予定でしたが、
台風24号のために京都近郊の交通路が次々と断たれ、やむなく当日の公演は〈中止決定〉せざるを得なくなりました。
前日の29日の夜、役員が集まり中止か否かと随分と時間をかけ相談。刻々と変わる台風と交通情報、その他関連事項を慎重に検討。
そして時間的にはギリギリの深夜に「延期」と苦渋の決定。
急遽、手分けして「先延ばし」の連絡を他のメンバーに知らせ、それぞれ手続きを進めて発表しました。
それは前日練習を含めての怒濤の一日でした。あれからほぼ2週間が経ちました。

 今年は台風が過去最多数発生したと知りました。
それによって各地が災害に見舞われ、多くの人々の生活が大きく揺さぶられ、振り回された夏となりました。
台風の備えに慣れていない本土では台風に襲われる度に経験を積んで対策を講じているのですが、なかなか追いつかないのが実情。
また今夏のように連続して災害が起こるとそれは見るも無残な光景を露呈してしまっています。
復興は各地方の行政だけでなく日本全体の問題として取り組むべき問題で、以後災害地には多くのボランティアや支援物資、そして多くの支援金が届けられていると聞きます。
早くの適切な対策によって不安のない生活が再び訪れますようにと願わずにはいられません。

 話をオペラに戻します。
前号では【神秘的かつ感動の四肢の動きーオペラ】と題して、歌い、踊り、演技する時の人間の運動美について書きました。
オリンピックの感動は勝敗だけではありませんね。
走る、飛ぶ、ジャンプする、回転する、その他あらゆる人間の動きの美しさに感動するというのが本来のスポーツの醍醐味だと私は思っています。
その要素をオペラ(私は「歌芝居」と言っています)にも応用する。
ただ、美しい声で歌い、巧みに楽器を美しく奏するだけでなく、そこに運動する美をも加味する。それが「歌芝居」の魅力だと思っています。
今回の演目であった間宮芳生作曲〝合唱のためのコンポジション第5番「鳥獣戯画」〟と西村朗作曲〔台本:佐々木幹郎〕〝二人の独唱者、混声合唱とピアノのための室内オペラ《清姫—水の鱗》(2011)〟はまさにそれらを示す絶好の曲でした。
二曲とも決して容易いものでなく相当難易度が高く、演奏するだけでも大変なのですがそこに動きも付ける。
「鳥獣戯画」は複雑なリズムの刻み、そして絵巻の中で踊る田植え歌に発する農耕儀礼の踊り「田楽」、その喧騒(けんそう)振りを表すために付けられたリズムはいかようにも運動美を創作できる魅力に溢れています。
「清姫—水の鱗」は恋の悲劇。
一途な庄屋の娘が修行僧を慕うが故に蛇に変身して〈愛〉を貫くという内容。
川に流す雛(ひな)も登場して、男女の恋の情念と痛々しいまでの切なさを歌とコーラスの響きで綴ります。
この公演来年の1月6日までお預けとなりました。  





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