八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.128


【掲載:2018/11/25(日)】

音楽旅歩き 第128回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

究極の至福は「食」にあり

 外食がほぼ毎日です。
自宅では同業者(ピアニスト)でもある〈つま〉が私同様忙しい中、私の健康を思いやって朝食、昼食を作ってくれるのですが、
夜は連れだって毎日のように外食しています。
その外食、まず仲間とのコミュニケーションとして定着しはじめたのですが、子育てが終わった頃から二人で一緒に出掛けて皆と食を共にするようになりました。
〔料理を作る〕という労力と時間がかかることの大変さを知っているものですから家から誘い出して、
仕事がらみ(彼女は団体のマネージャーでもあります)もありながらの「宴」となっています。
〈つま〉の話ではありません。〈食〉の話を今回はしてみたいと思いました。

 人間にとって究極の行動はと言えば、やはり〈食〉することではないかと思います。
〈食〉なくして〈人〉ではない、ということですね。
〈食〉が進まない、気がない、ということは健康ではないということです。
食欲は健康のバロメーターです。人間ほど貪欲に〈食〉を追究してきた生物はないと思われます。
よく言う「人類の移動」も元はと言えば〈食〉を求めての広がりです。
何でも食べてしまう人間。冒険心を基としながら〈食〉が世界に人間を拡散させました。

 つい先(せん)だって、東京での演奏会前夜に訪れた「八丁堀(はっちょうぼり)」のお店で、感動の料理(とはいっても小皿料理)を味わいました。
練習がことのほか上手くいったこともあって、ワインが飲みたくなり、たまたまホテルの近くにあったお店に入るという偶然の出会いです。
そこで出てきた小皿料理に仰天です。
まず素材が良い!そしてどの小皿でもその主なる素材にあったオリーブオイルが選ばれ、また添わられる食品にも合うように注がれています。
特にトマトが出てきたときには私は飛び上がらんばかりに驚きの叫びを上げたようです。
(一緒に食した仲間も同感だったようです)。その美味しいトマト、そしてそれをまた引き立てるオリーブオイル。
最初は翌日の本番に備えて一杯の赤ワインとおつまみだけで、と入ったお店でもう最高な至福の時を過ごすことになり、思っていたよりも長居となってしまいました。
店の看板にはあまり目立つことなくイタリア料理と書いてあるだけ。
店構えも高級な風でもない「居酒屋」的なもの。それが今現在に至ってもその味とワインが忘れられないでいるのですから、人間の味覚ってとてつもなく偉大なものです。
仕事や観光で訪れる地では、まず探すのは「沖縄料理」(泡盛が飲みたい!)のお店。
そして「イタリア料理」(もちろんワインが飲みたい!)、それに続いて「日本料理」(日本酒を味わいたい!)、「ドイツ料理」(実は料理よりドイツビールがお目当てですが)。
一般的には料理と言えば「フランス料理」とか「中華料理」ということになるのかも知れませんが最近は遠のきました。きっと私の「太る」を避けているからでしょう
。 「食」は人間の骨幹の営み。精精励むことにします。  





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