八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.160


【掲載:2020/08/23(日)】

音楽旅歩き 第160回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

『コロナ禍』での練習は「信頼」があってこその行為

 まだまだ「新型コロナウイルス」対応が続いています。
緊張しつつ、警戒を怠らない緩やかな雰囲気の日常が整然と流れている様に見えます。
今年始めのあの恐怖感に満ちて慌てふためいた行動が少し時を経て落ち着いてきているのかもしれません。
しかし、肝心のその対策については何も変わってはおらず、何が真実で何を大事にしているのかが不可解。迷走が続いているのが現状でしょう。
とにかく、色々な異なった意見がありますが、全ての人にとっての「不安解消」へと向かっていって欲しいと願わずにはいられません。

 世の中、「Go To トラベルキャンペーン」という不思議な制度ができ、出かけて良いのか、止まっているのが良いのか迷う事態。
しかし、キャンペーンによって沖縄本島でも一番心配されていることが起こってしまいました。
東京は出入り禁止、しかし、徐々に地方へと感染が広がっていったことは否(いな)めません。
そんな中、毎年恒例となっている合唱団の夏合宿(総合練習)を敢行することにしました。
その理由、根拠は幾つかあるのですが、大事な事だけを書くと「参加者(メンバー)が各自ウイルス感染予防をしているという確信。
お世話になる宿は幾年ものお付き合いで信頼性があり、今回もお互い万全の対策を講じることを確認した」ことでした。
「信頼」という言葉、今度ほど「安心感に包まれる」ためには必要不可欠なのだと再認識したことは貴重でした。
そしてその「信頼」に加えて、私にとって4泊5日を安全に過ごせるというGOサインを与えたのは場所です。
伊豆湯ヶ島温泉は山の中、川の畔に建つ宿であるということ。その宿の一つである「白雲楼」が決意の核心です。
一番気遣ったのは「感染していない地に私たちがウイルスを持ち込んでしまう」というシナリオです。
お宿の周りを見渡しても感染の心配しようのない環境です。
他府県からの人間である私たちが恐れることはありません。
お宿こそ、そしてその地の方々にとっての「不安」が問題です。
事実、周囲の他の旅館など今年は積極的に勧誘することなく、どちらかと言えば「自粛」という方向にあったと聞きました。
しかし、温泉郷にとって客がいないということは死活問題です。私たちのお宿もキャンセルが相次ぎ、私たちの訪れを心配されていました。

 一日中練習が続きます。それも五日間。
メンバーはタイムスケジュールによって休憩を取ることができます。
しかし、私には休憩はありません。無理矢理「休憩したい」と言って練習場から部屋に戻ったのは少しの時間だけです。
それでも充足感で終わることができたのは、音楽の楽しさ、そしてメンバーの笑顔があったればこそです。
ウイルス感染という目では確認できない相手との格闘は相当のストレスです。
そのストレスの中、音楽を楽しむことができたのはメンバーとの強い信頼関係の上に立っているからだと思います。
後に感染の有無を報告しましょう。それには少し期間が必要です。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ