八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.167


【掲載:2020/12/27(日)】

音楽旅歩き 第167回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

指揮者はアスリート!体力勝負でもあります

 数日前に今年最後の定期演奏会を終えました。
今年は「コロナ禍」での活動、本当に振り返れば大変な年だったと思います。
その時々では必死さが勝って、あまり客観的には大変さを感じる事はできなかったのですが、
こうして振り返るととんでもない年に、またまたとんでもない活動をしたものだと自身に感心もし、驚きもし、あっけにとられる思いの活動となっていました。

 演奏会とは「一期一会」、二度と味わえない「生きている瞬間」を証明する活動です。
全身全霊を傾けて臨むものですから命を削っている感が強いです。
お聴き下さる聴衆の方々、作曲家、仲間の演奏家たち、そしてホールや演奏会場でのスタッフとの遣り取りは「生きること」そのものに当たります。
互いに「活きている」ことを確認し合うわけですね。
「新型コロナウイルス」対策では右往左往の時期から、落ち着いて対応ができはじめた時期へと変化してきました。
それはウイルスの性格などの情報が多くなり、信頼性もよく見えるようになってきたことに依ります。
活動を自粛するという社会的手段もあったと思うのですが、
今思うに、感染者が出なかった、出さなかった活動だったことに少しばかり誇りを感じ、また関係者の皆様に改めて深く感謝したい気持ちで胸が一杯です。

 久しぶりに交響曲を振りました。曲は有名なアントニン・レオポルト・ドヴォルザーク(最近はドヴォルジャークと記載)の「新世界より」です。
余りにも有名すぎて、今更とも思えたのですが、メンバーのリクエストによって振ることとしました。
約40分間を要する曲。第一楽章は情景を描くための色彩感が問われ、
第二楽章には誰もが知っているだろうメロディーがイングリッシュホルンという楽器で演奏されます。
三楽章はなかなか手強い技巧的な曲、
そして最終章では圧巻のサウンドと気迫が要求される、といった構成です。
これを振り切るには相当の集中力と運動量とが必要なんですね。
正直に言えば、運動量に関しては手抜き(省エネ)の棒にもできるのですが、私の性格ではつい運動量が多くなります。
今回のテーマに「アスリート」と書いたのはこの辺りのイメージと重なる故です。
もう、陸上競技の長距離走をしているかのようです。
指揮者とは、体力、特に持久力が必要。
あまり公(おおやけ)にするのも憚(はばか)られるのですが、「腰痛」持ちとしてはなかなかの大仕事です。
この一年間は体力作りが目標。しかし、途中で一度また原因不明の腰痛もあったりで冷や冷や(ヒヤヒヤ)もの。
何度か座っての指揮から、立ち続ける指揮へとの転換が課題でした。11月にはいってからは納得の体調。ほぼ毎回立っての指揮です。
立つということは全身の筋肉バランスが求められ、上手くいけば更に運動量も増していくといったサイクルです。
踊るように、舞うように、走るように、飛び上がることもあります。
やはり日々体力作り。アスリートを目指すこともまた指揮者道です。





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