八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.214


【掲載:2023/06/04(日)】

音楽旅歩き 第214回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【「弱肉強食」は動物の世界 人間の世界も同じなのだろうか?】

 人間って弱肉強食という動物の習性をしっかり受け継いでいます。
その理由は動物と同じで〈生きて行くため〉です。弱者は強者の食べ物と成って生きるための糧となる。
強い者はその為に力を備える。そして倒す力を得て他(弱者)を襲い、命を頂く。

 人間も同じでしょう。この人類史は体力・攻撃力の強さだけで無く、環境適応能力、生存する知恵を駆使して生き残ってきた軌跡です。
その道中にはいつも闘争があり、略奪があり、暴行、醜行(しゅうこう)も横行したでしょう。
そして殺傷を通して支配を広げていったことは明らかです。
人間はこの地球上の王者となりました。人同士が命をかけて闘い勝ち取った玉座です。
生存するための知恵を持ち、己の身の安全を優先させながら他を襲い倒していく。
人と人との間にはそれを助長させる疑心暗鬼という厄介な心の澱(おり)があります。
疑心暗鬼を取り払うことができず、他を受け入れることができず、敵視して殺戮(さつりく)を繰り返す。
相手が何者で、何を考えているのか知ることができない状況にあるほど人間は凶暴化する。
死に対する恐怖心は更に増していき行動をエスカレートさせていく。変わることのない人間。変わることができない人間。
他の存在に気づけず、己の世界のみに関心を寄せる。

 「芸術」はその人間に有ります。動物の習性を超える世界があります。
人と人、そしてそれを包む大自然。それが繋がり合う世界です。その世界で人間は進化してきたのだと信じます。
ただ〈生きている〉だけでなく、〈生きる意味〉を探し求める存在。
〈生きている尊さ〉を自身が見ることのできる存在。
超えられるものであるならば、人間として新たな世界を創ってみたい。「習性」を脱して知恵を喜びたい。
弱肉強食を超えた関係を築きたい。新しい関係で繁栄を迎えたい。切実の希求です。

 石垣島にJアラート(全国瞬時警報システム)が鳴りましたね。さぞ驚かれたことでしょう。
いくら用意周到だったとしてもその瞬間パニックになりますよね。
どこに逃げれば良いか、建物、シェルター(避難所)?
訓練が出来ていない者にとっては右往左往の行動です。これからも鳴り続けるのでしょうか?
防ぐ手段を講じる。しかし、大きな恐怖とともに何らかの空から降ってくるモノはある。
これは既に「平和」ではなくなっている状態ではないのか。
紛争最前線という意味合いも浮かんできます。何故に石垣島?
恐怖が行動をエスカレートさせていく。
終わりはどうなるか?動物のように地球に守られて、地球の中での淘汰、適者生存では済まされません。
殺戮の規模は大きく、より悲惨になり、最後には地球の破壊とも繋がっている。
被爆の被害は日本だけではない。
これまでにも実験に依るものや、事故に依るものもあった。
しかし世界で唯一の「戦争被爆国」は日本。Jアラートの最悪のシナリオは核使用。
さて、人類のリアルな最後への発端が石垣島でありませんように。
祈っても、祈っても、祈っても、祈り足りません。





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