八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.214


【掲載:2023/06/18(日)】

音楽旅歩き 第214回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【「指揮法」は姿形での美だけでなく、心の綾の美も味わえるものに】

 6月10日(土)と11日(日)の二日間、「指揮法講座」を開講しました。
以前計画を立てていたのですが、あの「コロナ禍」にあって延期とし、やっと果たすことができた二日間でした。
つい熱い口調の講義となってしまいました。
課題曲として選んだ作品は静かで、瞑想的な曲想もあったのですが、
指揮技法でも強くて歯切れ良く、響きを保って会場を「席巻」するがごときの表現を必要とする作品も用意しました。
そのような時の振り方は「怒り・憤り」を持つ時に示す動きと同じです。

 最近の世の中に起こり続けている事態に対する感情と同じ。
そして、深さと静かさに充ちた「平安」への祈りの作品が相俟って「指揮技法」を修得するに相応しい時間となりました。
名曲には人間の真の感情が溢れています。
姿形での美だけでなく、心の綾の美も味わえるものにしたい、という意図がありました。
後に書いたSNSでの文です。転載します。

 『指揮法講座が終わりました。 実に楽しかったですね。
指揮技法を教わる初心者としてではなく、実践的に音楽作りのノウハウをレクチャーしたかった講座です。
基礎的な事はまとめてテキスト化して配付し、直ぐに受講生には合唱団を前にして振って頂きました。
とにかく課題曲に関しては細かな部分でアドバイスはしましたが、皆さんそれぞれに曲は振れていました。
最後には私が音楽づくりの一端をお見せして参考にして頂くという方法で講座を進めます。
解説・説明を言葉で理解して頂くより、観て、聴いて、感性を持って理解を深め、再び受講生に振って頂く。
その差をご自身にも、聴講して頂いている方々にも識って頂くことが目的でした。
その効果は十分に果たせたのではないかと思います。
初見での指揮も試みました。楽しい体験です。
難曲としての曲では無く、初見での「音楽掴み」の面白さを味わって頂きたいとの思いからの発想です。
指揮というのは、緊張するものです。
指揮者にとって一番大切なのは、演奏者を楽しませることから始まる、ということに尽きます。
演奏が楽しくなる、それは作品の面白さを伝えることでもあります。
指揮者自身が楽しさを表現できなければなりません。
「心の笑顔」が指揮者にも演奏者にも沸き立ってくる演奏であるべきと私は思っています。
教えるために、言うことを聞かせるために、権威を示すためでなく、奏者や聴衆への感動を先んじて示している、
それが指揮者です。
そんな音楽作りを二日間にわたって開講できたことはとても嬉しかったです。
聴講、そして参加して頂いた方々に改めてお礼を申しあげます。
「宴」の会も充実した時間となりました。重要な「質問」にお応えできたことも胸を撫で下ろしています。
どうか、記録動画が出来上がるのを楽しみにお待ちください。
どのように変化をもたらしたか、指揮の不思議を知って頂けるものと思います。』





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