八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.245


【掲載:2024/12/22(日)】

音楽旅歩き 第245回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【来年に夢を託せた師走。トンネルは抜けたか?】

 先日、私が主宰する「大阪コレギウム・ムジクム」のクリスマス・コンサートがありました。
ここ数年の音楽界は衰退に向かっていたのですが、やっと明るさも感じられる演奏会になったと感じています。
衰退の原因は約3年の『コロナ禍』。
そこに現れたこの国が抱え込んでしまった教育の後退であり、知性の低下。
そしてこの国の社会構造が持つ分断が顕著。
今ではその事が更に進み、様々な分野で内なる崩壊と乱れが表面に現れている有様。
しかし、それが身近になった事で事で〈気付いた人々〉が増えたと感じる。
そこで臨んだのが今回のクリスマスコンサートでした。
プログラムに載せた「演奏にあたって」を掲載します。

 『アントン・ブルックナーの曲はいつも私の中で鳴っています。好きなんだと思います。
ベートーヴェンに始まり、バッハ、H.シュッツ、ルネサンス作品、そして世界で話題となっている作品と日本のお気に入りの作品が私のレパートリー。
難解のな「現代音楽」と呼ばれるジャンルも含まれます。
いつの時代でもその特徴を最もよく表している作曲家に興味を持ちました。
「人間」が出ている作品が良いですね。
「多様性」という言葉が溢れていますが、本当に人間って人それぞれの特徴、色を放っています。
演奏を通して教えられてきました。音楽家冥利に尽きるというものです。
ブルックナー生誕200年という節目の年です。彼の作品を演奏できることに感謝です。

 カール・ジェンキンスの音楽とは何か?
コマーシャルの音楽で一躍世に出てきて、映像的にも、現代風の甘美なスタイルが魅力的。
「PALLADIO(パラディオ)」は1楽章が有名。
2楽章、3楽章はあまり演奏されることがなく、人間好き故にその人物を知りたいと思って今回は全曲を演奏します。
2楽章では静謐の中に独奏ヴァイオリンが甘味なメロディを二重奏で絡ませる。
3楽章は特筆。ミニマル音楽です。二小節の繰り返しを執拗に繰り返す。「反復音楽」です。
少しづつ音は変化するが大きくは変化しない。
正直、演奏者泣かせの曲です、お聴きになりこの楽章を終えた時、全曲を通して何を感じられたかとても興味を持っています。

 木下牧子さんの作品は若かい時の編曲。ご本人へのクリスマス時期での〈おねだり〉に提案を頂いた曲です。
編曲の質が高いです。楽器をよく知り、なおかつ精緻な筆。並の人ではないことを示しています。』

文化とは多様です。多様性こそ価値がある。
「お金」に価値を高く与える現代。
お金に換算できない価値の高いものがあります。それが「芸術」という文化です。
私は思うのですね、人の技を見聞きして「感動」できることが何よりも幸福なのだと。平和なのだと。
今回のコンサート、来年に50周年を迎えるにあたり、この国の文化へ寄与できたのではないかと胸を撫で下ろしています。
当日のホールでは人の心の温かさが身に染み、我が心も「生きている」「生きたい」と強く感じました。
来年に夢を託します。
よい年末となりました。





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