八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.252


【掲載:2025/04/20(日)】

音楽旅歩き 第252回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【「疲れた」と思った時 「決める」という選択数を減らしましょう】

 仕事が山ほどある毎日。しかし、やる気はあるのですが直ぐに疲れる。
これはどうも体の問題ではなく脳が疲れているからではないかと思う今日この頃です。
私の仕事で一番時間を取られているのは「指揮の現場ではなく」自宅や書斎での机上での作業です。
まず目が疲れる。次第にピントが合わなくなってくる、そのうち眠気が襲ってくる。

 以前ならば6時間ぐらいは集中力が続いたのですが、今では長くて2時間です。
「老いたのか・・・・・・」と思う私。しかし、それでは納得できない私も居る。考えます。
「筋肉の疲れではないとすれば、机上作業ですから脳としか考えられない」と。
そこで調べたのですが興味深い事を知りました。
それが心理学の概念に基づいた「決定疲れ(decision fatigue)」という項目です。
最近話題になっているらしいです。
「人間は一日にできる意思決定の数に限りがあり、たくさんの決断をすると脳が疲れて、後になるほど判断力や意志力が低下するという現象」とありました。
これ、納得!ですね。
そう言えば、選択することが私の主な作業です。休憩したいとか、自然と眠気が生じるのはそういった作業の後です。
これは脳にとっては負担が多いという結果なんでしょうね。

 で、これを回避するにはどうすれば良いか?これについてもヒントが掲載されていました。
たとえば、朝には食事や服の選択にこだわる人ならば、いっそ「毎日同じにすれば意志決定(選択)の数を減らすことができる」です。
ルーチン化するということですね。
有名な例としてオバマ元大統領やAppleの創業者であるスティーブ・ジョブズが「服装を毎日同じにすることで、意思決定の数を減らしていた」という話で知られています。
朝ならば、同じ時間に起きて、同じ朝食、同じ服装などルーチン化すると、それだけで脳の負担が減るというわけです。
朝食はローテーション制でしょうね。
とにかく前日までに、翌日の服装や食事メニュー、するべき事を決めておけば良い。

 朝になってから「今日は何をしよう」と思い悩むことなく、時間とエネルギーをカットすることで多大なる効果が出ます、なんです。
午前中、脳はまだフレッシュです。
午後から夕方は疲弊しますね。
ですからドイツなどでは午前に大事な会議や重要な決断事項を持ってきます。
多すぎる選択肢は疲れる原因。
だから、「選ぶ」より「決めておく」が有効なんですね。

 常に意志決定を強いられる人間。鍛える必要がありますね。
意志力って筋肉みたいなもので、使いすぎると疲れる。
でも鍛えたり温存したりもできる筈です。意志決定に一定の「枠」を作りましょうか。
「やらないこと」を作ってしまえばいいわけです。
「やらないこと」をルール化しておく。
例えば、21時以降は仕事はしない、その為には「仕事のメール」は見ないとか、また決定に迷ったらそこでそれ以上考えない。
あるいは「5分以内で決める!」と割り切ってしまうことです。
まだまだ脳も鍛えられると言うことなんですね。





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